宇宙エレベーターの利点・課題と実現する未来

テクノロジー応用編

宇宙エレベーターとは宇宙へのアクセスを圧倒的に容易にする革新的アイデアです。技術的にはかなり実現に近づいている段階です。

今回はそんな宇宙エレベーターの利点や実現までにどんな課題があるのかを中心にまとめていきましょう。

宇宙エレベーターとは何か、その歴史、作り方について詳しく興味ある方は「宇宙エレベーター ~実現するか⁉宇宙への扉~」をご覧ください。

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宇宙エレベーターの利点

海から延びる宇宙エレベーターの予想図 参照:大林組

価格

宇宙エレベーターの最大の利点は宇宙に到達するための価格が大幅に安くなることです。

現在の主要な宇宙への到達手段であるロケット一回の打ち上げ費用は約100億円と言われています。荷物1キロにつき100万円、人間を運ぶとなると1億円ほどかかる非常に高価なものです。

その高価さは使い捨てのボディやエンジン、大量の燃料などに由来し、かなり不経済な輸送手段です。

インフラから作る宇宙エレベーターと単純な値段の比較はできないのですが、エレベーター完成後に定期運用させた場合100分の1以下に下がるかもしれません。

容量

現在のロケットが一度に運べる量は5~10トンほどです。これは多いように感じますが、一般的な引っ越しに使われるトラックが4トントラックであることを考えると、2家族分の引っ越し荷物と同じくらいしか積めません。

月面基地や地球外基地、深宇宙探検といった宇宙開発の次のステップを考えると、宇宙にはもっと多くの物資を運ぶ必要があります。具体的には数百トンから数千トンを運ぶ能力が必要とされるでしょう。

その運搬能力がロケットで賄えない以上、宇宙エレベーターにその期待がのしかかることになります。

このように宇宙エレベーターは価格の低下・定期運航・積載量増加という方法で宇宙へのアクセスを圧倒的に改善する手段として期待されているのです。

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宇宙エレベーターの課題

ケーブルの素材

宇宙エレベーター建設の最大の課題になっているのがケーブルの素材です。建設するには宇宙の環境下で強い力に耐えるケーブルが何万キロも必要になります。

宇宙エレベーターに必要なケーブルの強度は100GPaと言われています。糸くらいの細さで車を持ち上げる強度が必要なのです。(電線が0.3GPaほど)

少し前まではそのような素材は存在せず、夢物語でした。しかし1991年に開発されたカーボンナノチューブの技術が状況を大きく変えます。

この軽くて強くて柔軟な新素材は60~100GPaの伸張性を誇っており、宇宙エレベーターのケーブルの筆頭候補として期待されています。

高品質なカーボンナノチューブを量産する技術はまだ完成していませんが、今後の研究開発に期待ですね。

宇宙の障害物

宇宙エレベーターの安全を脅かすのは宇宙の障害物です。

具体的には以下のものが懸念されます。

  • 航空機
  • 人工衛星
  • スペースデブリ(過去のロケットや人工衛星によって排出された宇宙ゴミ)
  • 極小天体(隕石や小惑星など)

航空機や人工衛星は制御や予測が正確に行えます。また極小天体の中でリスクの高いものはあらかじめモニタリングされているのでそこまで大きな危険性はないでしょう。

問題なのはスペースデブリです。10センチ以上のものは位置やコースが把握されているのですが、それより小さいものは不明です。10センチ以下と言っても秒速10キロという超高速で飛ぶスペースデブリが衝突した時の衝撃の大きさは測りきれません。

無防備なケーブルは多重化することで、保険を掛けるようにリスクを分散し、安全を担保していく必要があるでしょう。

宇宙エレベーターによってもたらされる未来

 宇宙エレベーターの内部予想図 参照:大林組

かつてない大量輸送

低価格・定期運航・積載量増加を可能にする宇宙エレベーターは、宇宙開発のコンセプトを根本から変えるくらい大きな影響をもたらすでしょう。

サイズや重量の制限がいままでより少なくなり、かつてないインフラを宇宙空間上に築けるかもしれません。

天体観測

天体観測は大気の流動や天候の影響に常に苦しめられてきました。これまでは空気中のちりや水分が少なく、街の光がちかくにない、天候のいい場所に大規模な天文台を作り工夫してきました。

宇宙で観察できればこれらの問題点はすべて解決するのですが、ロケットによる重量制限と振動のせいで、宇宙での観測はあまりメジャーな手段ではありません。

しかし宇宙エレベーターならこの制限をクリアすることが可能です。地上の天文台よりはるかにいい条件が用意できるため、今までは分からなかった宇宙の様子が発見できるかもしれません。

宇宙太陽光発電

宇宙太陽光発電は自然エネルギー利用の究極形態です。

太陽光パネルを持つ人工衛星を打ち上げ、そこで作られる電力をレーザー光に変換して地上に送ります。

何より宇宙での発電は大気や気象の影響を受けません。そのため発電効率は地上よりはるかに高いです。さらに太陽光パネルを広げる空間もいくらでもあります。

宇宙旅行

宇宙へのアクセスにお金がかかる現在、宇宙旅行は「途方もない金持ちの娯楽」の域を出ません。宇宙エレベーターによる大量輸送によって、輸送コストが下がるため、1人数百万円といった値段で実現できる可能性があります。

100年前は海外旅行など夢のまた夢だった人が多いですが、現在は輸送手段の発達によって多くの人に可能な楽しみになりました。宇宙旅行も同様の変化が輸送手段の変化によって生じる可能性があります。

まとめ

宇宙エレベーターは宇宙開発に革命をもたらすような大変革ですが、その完成までの道のりはまだ遠く、多くの課題があることが分かりました。

私たちが生きている間に完成するかも不明ですが、夢が膨らむ話ですね。

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