海外のMaaSは日本より1歩も2歩も進んでいる状況であると言われています。それは日本と海外では前提となる条件が大きく異なっているというのが主な理由です。
日本には日本の状況にあった方法でMaaSを導入していくべきでしょう。今回は日本のMaaSを行う上で大切となる、日本の特徴・国の取り組み、さらに大いに参考になる台湾のMaaS事情についてまとめていきます。
日本の交通の特徴
MaaS先進国と言われるフィンランドや欧米諸国と日本では、大きな環境の差があります。それは日本の交通事業者の多くが民間企業であるということです。
欧州では公共交通を一つのインフラとして、公的組織が一元的に運営してきました。これは公共交通は赤字が出やすいこの事業で、民営には不向きであったために起こった現象です。ですがこのことによって、MaaSの概念のある程度の部分が達成されやすい下地ができていました。
逆に、日本の公共交通も多くは公的組織からスタートしましたが、その後は民営化の流れを経て現在に至っています。狭い国土でも1億人という「高い人口密度」を保っているために、民間でも利益を出せる環境でした。
10以上の事業者がひしめく東京は、ある意味で世界で最もMaaS導入が難しい都市であると言えます。
しかし逆に民間企業だからこそ可能になる部分もあるでしょう。
沿線に商業施設や住宅を整備し、総合的なサービスを展開するビジネスモデルは日本で深く根付いた形です。
このように移動と様々なサービスを連携させる土壌が形成されていることは日本の長所と言えます。
JCoMaaS
JCoMaaSとは2018年にできた官民学が連携してMaaSについて考える団体の日本版です。
JCoMaaSは上のような特徴を持つ日本社会にマッチしたMaaSの社会実装を目指しています。
地域によって異なる交通
東京に住む人と田舎に住む人ではその移動スタイルに大きな違いがあります。
国土交通省は日本における移動スタイルとそれに伴うMaaSの形を5つに分類し定義しました
- 大都市型:鉄道主体
- 大都市近郊型:鉄道/自動車
- 地方都市型:自動車主体
- 地方郊外・過疎地型:自動車主体
- 観光地型:-
この中で世界中で取り組まれているモデルは1の大都市型がほとんどです。
しかし自家用車への依存・公共交通の利便性と採算性・自家用車非保有者の移動手段不足などの多くの問題を抱えている地方でも、MaaSの実現は望まれています。
今回はこの5つのタイプの中から「地方型MaaS」と「観光型MaaS」を見ていきましょう。
地方型MaaS
解決が期待される課題
- 自家用車への依存
- 公共交通の利便性・採算性
- 公共交通のドライバー不足
- 自家用車非保有者・免許返納後の移動
- 交通空白地帯の拡大
これだけ多くの課題を抱えているにも関わらず、地方の公共交通のデジタル化はなかなか進みません。
まずはデジタル技術を導入し、データの収集・利用を行うことが第一段階と言えます。駅やバス停、道路整備などハードウェアの最適化が必要です。
地方ならではの統合しやすいというメリットを活かして、自治体と交通事業者・住居者が良好な関係を気づきながら街つくりを行うことが必要になります。
観光型MaaS
観光地の中には乗り物同士の連携が悪い地域があり、客足が遠ざかる原因となっています。
そこで注目されているのが、MaaSの概念を観光地の回遊性向上に役立てようという観光型MaaSの取り組みです。
観光地におけるフリーパスなどが以前から存在していました。これをデジタル化して使いやすくしたり、新しいモビリティサービスを取り込めば観光型MaaSの実現にかなり近づくでしょう。
その一例が東急が静岡県の伊豆半島で取り組んでいる「Izuko」です。
公共交通や観光施設のデジタルチケットが選ぶ・買う・見せるの3ステップのみで使用可能になっています。そのため、運賃を用意する煩わしさや、慣れない地方の交通事情を調べて動くことから解放し、より観光を楽しめるようになっているのです。
台湾のMaaS
台湾は日本が統治していた時代があるため、公共交通や道路などのインフラに類似点が多いです。そのため台湾で行われているMaaSの取り組みは、日本でも大いに参考になるでしょう。
MaaSプロジェクトが行われているのは台湾北部の台北と南部の高雄です。
UMAJI
UMAJIは台北で行われているMaaSプロジェクトの名称です。台北では週末のショッピングに向かいマイカーによる交通渋滞が大きな問題になっています。
そのような状況の中、この取り組みではマイカーの他にも公共交通の予約決済のみならず、経路検索・スケジュール・買い物での決済・移動を変更してもらうためのインセンティブを与えているのです。例えば早い時間に家を出た人にはコーヒー券を配布するなどがそのインセンティブに利用されています。
UMAJIのユニークな点はマイカー移動をMaaSに組み込んでいる点です。
欧米のMaaSでは欧米では公共交通と次世代モビリティサービスが中心でした。しかし台湾では日本と同様に、マイカー移動が住民の足として定着しています。
そのためマイカーをMaaSに組み込んで地域全体の移動を最適化しているこの取り組みは日本にとっても大いに参考になるでしょう。
Men-Go
Men-Goは南部の高雄で推進されているMaaSアプリです。
こちらは通勤に特化しており、通勤用MaaSの一面が強いです。
定額プランで地下鉄・LRT・バス・自転車シェア・タクシーが乗り放題になります
まとめ
日本におけるMaaSの目指すところ以下の2点に凝集されます
- 一つのアプリで全国津々浦々の交通手段の検索・予約・決済が行え、病院や飲食店、行政サービスの予約決済もワンストップで行えること
- これにより人々の外出や旅行など移動に対する抵抗感が低下し、移動・交流意欲が高まり、健康が増進され、街や地域全体も活性化し、豊かな生活が実現すること
この実現のために今後どのような取り組みが行われていくか要注目ですね。
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