スマート農業とは? 取り組む企業や例を徹底解説

SDGs

インターネットの進歩は目覚ましく、IT分野以外にもその応用の波は広がっています。そして今までITからは遠い立ち位置であった「農業」にまでAIやIoTなどのIT技術が浸透してきています。

今回はそんな農業×情報通信技術のスマート農業についてまとめていきます。スマート農業とは何か?スマート農業の利点・その具体例などを中心に整理していくのでぜひ最後までご覧ください。

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スマート農業とは

スマート農業とは「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活⽤する農業」です。

スマート農業が可能にすること①:作業の自動化

スマート農業の利点は省力化です。

日本では農業従事者の減少が大きな問題になっています。2015年には176万人だった農業従事者が、2020年には136万人へと減少しているのです。農業は依然として人手に頼る作業が多く、省力化と負担の軽減が重要な課題になっています。

ロボットや遠隔操作を可能にするスマート農業はこの問題を解決する手段として期待されています。

スマート農業によって浮いた時間をマーケティングや商品開発、営業に割けるため、農家の収益増加にも期待です。

スマート農業が可能にすること②:情報共有の簡易化

二つ目のメリットは「熟練の勘や経験の伝承」です。

日本の農業の大きな流れで従事者の減少と並んで指摘されるのが、高齢化です。実際に農業従事者の65歳以上の割合は2015年の64.9%から2020年には 69.8%に増加しました。

ただえさえ若い農業従事者が減少しているために、その知識や技術の引継ぎはより効率的に行われる必要が増大しているのです。

これまでの大量の栽培データを集め、処理することで、勘や経験の形式化によって、情報共有の簡易化が期待されています。

スマート農業が可能にすること③:データの活用

トラクターの普及や化学肥料の誕生のような、今まで以上に便利な道具が導入されるのがスマート農業ではありません。

農業から得られるデータをすくい上げて、知識の形式化や更なる農業の改善に活かすという、データ利用のサイクルを回すことがスマート農業の本命です。

スマート農機、農業ロボット、ドローン、IoT機器等を導入する場合、農業に関する大量のデータが集まるでしょう。この今まで活用されてこなかった大きな資源を活かすことがスマート農業には不可欠です。

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スマート農業の具体例

ここからはスマート農業が実際にどのように利用されているのかについて見てきましょう。

今回取り上げるのが以下の三点です。

  1. 次世代ファーム
  2. 農業ロボット
  3. 生産プラットフォーム

順番に見ていきましょう!

次世代ファーム

次世代ファームとは植物工場にて農業生産を行うことです。

次世代ファームでは閉鎖空間内で栽培するため、天候不順の影響を受けず、内部の光や温度・湿度、養分水分などをコントロールして計画的に育成することができます。

次世代ファームの三つの利点

  • 定時納品
  • 安定供給(量、価格、品質)
  • 安全(病原菌の混入や大気汚染の影響から守る)

室内で栽培を行うこの取り組みはそれほど新しい取り組みではありません。1980年ごろから取り組みが始まっており、何度もニュースなどで取り上げられましたが、収益化させることができず、いくつもの工場が閉鎖に追い込まれていきました。

そんな次世代ファームに変革をもたらすと期待されているのが、スマート農業によるデータの利用です。管理しやすくデータを活かしやすいこの環境において、データの利活用のサイクルを進めることで、収益化の壁を越えられるかという点に注目が集まっています。

この分野における代表的なプレイヤーは「ファームシップ(東京)」です。

2014年創業ながら、他企業との連携によって設立6年で国内最大規模の植物工場ネットワークを構築することに成功しました。

株式会社ファームシップ (farmship.co.jp)

農業ロボット

ドローン

農業分野において最も大きな変革をもたらすと期待されているのはドローンです。

ドローンは農薬散布・センシング(生育調査・植生分析)・受粉・農産物運搬・鳥獣害対策などの分野での活躍が期待されています。IoT機器としてのデータ収集とロボットとしての業務の両方をこなすことができます。

現在は、手続きや法律が複雑で需要を満たすほど供給ができていません。しかしドローンは政府が空の産業革命と位置付けており、今後の拡充が見込まれています。

収穫ロボット

収穫ロボットはその名の通り、野菜や果実の収穫を自動で行うロボットです。IoTセンサーやAIを搭載したロボットが、画像認識やロボットアームを利用して収穫期の農産物を見極めて自動で収穫します。

農業の全作業時間に対する収穫時間の割合はとても大きいと言われています。イチゴやキュウリで5割、アスパラガスやピーマンで6割が収穫作業の時間です。

2019年から実験が開始された段階なので、販売はまだ先ですが、従事者の負担を大きく減らす手段として期待されています。

この分野での代表的なプレイヤーは「inaho(神奈川)」です。

この企業は自動でアスパラガスを収穫する機会の開発に成功しており、佐賀県で実証的な販売を行っています。

ロボットトラクター

車が自動運転化するように農業機器においても自動運転の波が訪れています。

具体的にはトラクター・田植え機・コンバインにて自動運転化が始まっています。

現在は有人監視下での自動運転で、完全自動化も技術的には近いと言われています。しかしそれを支える通信技術などのインフラ面を含めると、実現はまだ先の話になりそうです。

生産プラットフォーム

スマート農業の生産プラットフォームとはクラウドやセンサー、AI、ビッグデータなどのデジタル技術を活用して、生産プロセスの改善を図る仕組みです。

具体例として国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構が中心となって開発した「農業データ連携基盤(WAGRI)」が挙げられます。

WAGRIの仕組み:農林水産省より

WAGRIは今までバラバラだった農業に関わるデータを集約・蓄積して、「連携」・「共有」・「提供」が可能にするシステムです。

生産・加工・流通・消費・輸出に関するデータを活用することで、農家が求める新しいサービスの開発や各農家の戦略的な経営判断を可能にします。

まとめ

スマート農業では情報通信技術と農業を組み合わせて従来の課題にアプローチしようとしていることがよく分かりました。

農家以外は直接目にする機会の少ない変化かもしれませんが、その影響は非常に大きなものになるでしょう。

私たちの食を取り巻くこの変化について今後も注視していきたいですね。

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