アグリテックとは? 第三次農業革命を起こす「農業×テクノロジー」

SDGs

テクノロジーの進歩は目覚ましく、IT分野以外にもその応用の波は広がっています。今回はテクノロジーが農業にどのような影響を及ぼすのかまとめていきます。

「スマート農業」や「アグリテック」など様々な言葉が話題になっていますが、その関係性や今後について整理していきましょう。

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アグリテックとは

アグリテックとは農業(Agriculture)テクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語です。

アグリテックとは今までの農業における課題をAIやドローン、ビックデータ、IoT、ブロックチェーンなどの最新技術で解決するという試みです。

似た言葉にスマート農業がありますが、アグリテックの方が幅広い概念です。スマート農業などの生産分野に加え、流通分野、人工肉等のバイオ分野などを含みます。

アグリテックは第三次農業革命と言われています。ここからは今までの農業技術の発展を振り返ってどのように農業が発展してきたのか、そして第三次農業革命はどのようなものになるのか見ていきましょう。

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農業技術の進歩

第一次農業革命

第一次農業革命の中心はトラクターの誕生と普及です。19世紀にイギリスで開発されたトラクターは、1920年ごろアメリカの自動車メーカー「フォード」が改良し、欧米を中心に広がりました。

それまで牛や馬に依存していた状況を変化させ、農業の生産性を飛躍的に高めました。また、トラクターによる機械化は大規模農業や農家の組織化といった変化をもたらしました。

第二次農業革命

1960年ごろに起きた第二次農業革命は「緑の革命」と言われています。

この時期にはアジアの人口が急激に増え食糧危機への不安が高まりました。現在と似たような状況ですね。

第二次農業革命の中心になったのは「品種改良」「化学肥料」「灌漑」です。

品種改良:気候変化に強く、多くの実りをもたらす小麦や米の新品種が誕生しました。

化学肥料:植物の三大栄養素は窒素・リン・カリウムです。それまでは窒素肥料を人工的に作り出すことができず、世界的に窒素肥料が不足していました。ですがこの時期にハーバーボッシュ法の発明により空気中の窒素をアンモニアとして固定することに成功したため、この肥料問題が完全に解決されたのです。

灌漑:水を管理する灌漑技術として、この時期に発明されたのが点滴灌漑です。ピンポイントに水をやるこの技術の誕生により、水管理が圧倒的に楽になったのです。

第三次農業革命

第三次農業革命はアグリテックと総称されます。その大きな特徴はデータとテクノロジーを有効に利用して、効率化を図るということです。詳しい内容は下の章でみていきます。

今までの各段階ごとに、世界中で懸念されている課題があり、農業革命はそれを乗り越える変化でした。現在はどのような課題が懸念されており、第三次農業革命は何を期待されているのでしょうか?

第三次農業革命に期待されていること

世界の人口増加に対する食糧供給

世界の人口は2020年時点で77億人です。世界の人口は今後は2050年に97億人に達し、2100年ごろ110億人で頭打ちになることが予想されています。

問題となるのは食料供給をどう増産していくかです。これは第二次農業革命の時の課題にも似ていますね。さらに水資源の不足も問題となってきているので、従来のように水を大量に消費する灌漑方法も利用できません。

アプローチ方法は比較的シンプルで、「農地面積の増大」か「単位面積当たりの収穫量の増加」に絞られます。

植物工場などで農地面積を増やしながら、データを有効活用して単位面積当たりの収穫量を増大させることが期待されています。

持続可能な新たなシステム創り

第三次農業革命のもう一つの目的は「持続可能な食のエコシステム創り」です。

その背景にあるのはSDGsへの関心の高まりです。SDGsとは「SDGsは先進国と途上国が格差問題・持続可能な消費と生産・環境問題に協力して取り組むための目標」です。2020年代には欠かせないキーワードとなるでしょう。SDGsについてより詳しく知りたい方は「SDGsとは 最新テクノロジー×SDGsの世界」をご覧ください。

実際、多くの人が今の生産システムを持続可能だと考えていないのは明らかです。健康や環境、動物愛護などに配慮したイノベーションが期待されています。

アグリテックを構成する分野

第二次農業革命のポイントは「品種改良」「化学肥料」「灌漑」でした。

では、第三次農業革命ではどのような分野が中心になっていくのでしょうか?

今回は以下の三点を取り上げます。

  • スマート農業
  • 人工肉
  • 流通プラットフォーム

スマート農業

スマート農業とは「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活⽤する農業」です。

室内で環境をコントロールしながら野菜を栽培する次世代ファームや、自動運転・遠隔操作可能な農業ロボット(ドローン・収穫ロボット・トラクター)、生産プラットフォームなどの要素がスマート農業にはあります。

スマート農業はアグリテックの代表的分野で、テクノロジーによる課題の解決が強く期待されています。

より詳しく知りたい方は「スマート農業とは? 取り組む企業や例を徹底解説」をご覧ください。

人工肉

人工肉とは「牛や豚、鶏などの肉の味や食感を人工的に作りだした加工食品」のことです。この分野は畜産業が抱える問題を解決するイノベーションを期待されています。

植物肉で有名なビヨンドミート社の製品

人工肉には大豆やエンドウ豆から作る「植物肉」と、動物の細胞を培養させて作る「培養肉」があります。

どちらの分野も多くの企業が取り組みを見せており、特に植物肉は既に市場に出回って、私たちでも手に入る段階に来ました。

人工肉とは何か・どのような問題を解決するのか・代表的プレイヤー・気になる味と値段などについてより詳しく知りたい方は「人工肉とは 植物肉・培養肉が世界を変える!」をご覧ください。

流通プラットフォーム

流通プラットフォームとは分かりやすく言えば、「オンラインを活用した農畜水産物の直接取引環境の整備」です。

現在のような市場やスーパーを通しての流通だと多くの仲介業者が入り、お金や時間がかかるという問題があります。農産物のEC(オンラインショッピング)が可能になれば、農産物の流通をより無駄なく行うことが可能です。

また、卸売市場は農産物の流通のビッグデータを得られる市場であるため、新しい流通プラットフォームがデータを活用によって、各関係者に今までなかった有益なサービスを提供できるでしょう。

農業の流通プラットフォームの最先端は中国です。巨大ECサイトの「アリババ」や中国第二位の「JDドットコム」などは2010年ごろから生鮮食品の取り扱いを開始しています。

また、アメリカの「Amazonフレッシュ」も肉や野菜を自宅に届けるサービスを開始しています。

日本にも2017年ごろ上陸しており、一部の地域ですが既に利用可能です。直接農家と消費者をつなぐ設備が急ピッチで完成しつつあるのですね。

まとめ

テクノロジーが農業に及ぼす影響は、生産・流通・バイオと様々な分野に及ぶことが分かりました。

第一次・第二次の農業革命が世界に与えた影響の大きさを考えると、今回の農業革命でもどれほどの変化が起きて、課題が達成されるのか楽しみですね。

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