2020年12月6日、小惑星リュウグウのサンプルを格納し、「はやぶさ2」が地球に帰還したことが日本でニュースになりました。宇宙開発は私たちが身近に実感できるものではありませんが、着実に進んでいる分野です。
今回はそんな宇宙ビジネスの基礎となる、「宇宙開発の歴史」や「宇宙利用の現状」を中心にまとめていこうと思います。
宇宙利用の歴史
宇宙開発ビジネスは軍事から派生して生まれました。ロケットや人工衛星の開発利用について知ることで、より深く理解するために見ていきましょう。
第1ステージ
宇宙開発が本格的に始まった1970年ごろまでは第1ステージと呼ばれます。
ソ連とアメリカが冷戦下で宇宙開発を競い合ったように、国家主導の大型宇宙開発がこの時期の特徴と言えます。
【ソ】1957年初の人工衛星スプートニク打ち上げ成功
【米】1958年スプートニク成功に衝撃を受け、NASA(航空宇宙局)設立
【ソ】1961年ガガーリンが初めて有人宇宙飛行「地球は青かった」の名言
【米】1969年人類初の月面着陸
【米】1973年GPS計画発表
このように両国が宇宙に衛星や人を送る競争に躍起になりました。その裏には宇宙へのアクセス力や宇宙を先に開発することが、軍事的に優位に立つことに直結するという軍事面と強い関わりがあります。
この時期の宇宙ビジネスはまだ民間企業や他の国が参入する段階ではありませんでした。
第2ステージ
アメリカ・ソ連間の冷戦が沈静化するにつれて、宇宙ビジネスは次の段階に入ります。それが1980~1990年の第二ステージです。
この時期の特徴は宇宙利用と商業化です。
冷戦の終了による宇宙国家予算の縮小により、宇宙開発が国際協調プロジェクトや民間企業の手で行われるようになりました。
その代表例1984年に発表された国際宇宙ステーションです。これはアメリカを中心とした15か国の協力により、2011年に完成しました。
民間企業の動きも活発となり、宇宙起業家の活躍により現在活躍する宇宙ベンチャー企業の多くもこの時期に生まれました。
またただ単に宇宙にアクセスするだけでなく、衛星の利用が本格的に始まったのもこの時期です。観測・測位・通信のための衛星利用が進み、今では馴染みの深いGPSや衛星通信システムが発達しました。
第3ステージ
2000年から現在に至るこの時代は第3ステージと呼ばれています。
商業化が加速し、中国インドなど新興国の宇宙開発参加や、ベンチャー企業の参入がこの時期の特徴です。
ここからは現在の第3ステージを中心に話をしていきます。
宇宙ビジネス市場について
市場規模・成長率
現在の宇宙ビジネスの市場規模は40兆円と言われています。(2018年のeコマースの市場規模が300兆円、eスポーツが1000億円)
2009年から2016年までの年平均成長率は5%ほどです。AR・VRが113%、ドローンが13%ずつ毎年成長していることを考えると、着実ですが爆発的に伸びているという感じではなさそうです。
分野ごとの内訳
宇宙と言うと、ロケットの製造や打ち上げが思い浮かびますが、実際は少し異なるようです。
市場が大きいのが衛星サービスです。全体の30%ほどを占めるこの分野は「通信」「測位(GPS)」「観測(気象衛星・偵察)」などが中心となります。
衛星サービスと並んで大きな存在感を放つのが地上設備です。ロケットや人工衛星の製造・打ち上げが全体の10%にも満たないのは驚きですね。
宇宙市場の特徴
この分野の需要は他の分野に比べて官需の量が大きく、政府の影響がいまだに大きいです。特に日本の宇宙ビジネスの90%が政府需要であり、いかに政府が大きな存在感を持っているかが分かります。
アメリカでは少し事情が異なります。民間の需要が40%ほとあり、企業間のビジネスや衛星データを利用したサービスが民間企業の手で活発に行われているのですね。
とは言ってもアメリカ政府の存在は強烈です。政府需要が約5兆円と、他のすべての政府需要の合計より多いのです。
G2Bが目立つ宇宙市場ですが、対企業、対消費者のビジネスがこれから発達し、多様化していくと予想されます。
それに取り組む企業宇宙ビジネスとそれに取り組む企業
宇宙開発の第3ステージは民間企業の参入と多様性の時代です。
その変化によって生じた宇宙×〇〇といった宇宙ビジネスについて詳しく知りたい方は「宇宙技術のビジネス利用 ~宇宙×〇〇の時代へ~」をご覧ください。
また、現在を代表する宇宙ビジネスのプレイヤーについてまとめた「宇宙に取り組む企業」もおすすめです。
まとめ
宇宙分野も紆余曲折を経て発展してきたのですね。そして第3ステージと呼ばれる現在は、多くの民間企業の参入によって多様性が増し、まさに花開こうという段階です。
過去と現状を踏まえて、将来の宇宙ビジネスに注目していきたいところですね!
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