あらゆるものがインターネットに繋がるIoTの時代において、ますます脚光を浴びている技術がエッジコンピューティングです。
なぜエッジコンピューティングが今注目されているのか、その仕組みや利点、利用例やこれからについてまとめていこうと思います。
エッジコンピューティングとは
エッジコンピューティングとは端末により近い場所にサーバを分散配置する仕組みのことです。これによりデータを装置や機械の稼働データを機器の近くで処理することができるようになります。
エッジコンピューティングはクラウドコンピューティングと対になる関連の深い言葉です。ここからは両者の仕組みを説明していきます。
従来のクラウドコンピューティングの仕組み
従来の方法では、クラウド(遠く離れた企業のコンピュータ)にインターネットを通してデータを送ってから処理していました。またその後の応答も来た経路を逆戻りして、クラウドからデバイスまで届けられていたのです。
エッジコンピューティングの仕組み
エッジコンピューティングでは画像の通りデータを処理する場所がクラウドだけではありません。モバイル網や固定網、場合によっては基地局やスマホの中にコンピュータを搭載し、処理することができます。
なぜエッジコンピューティングが必要なのか
全てのものがネットにつながるIoTの進展により取り扱われるデータ量が増大してきています。
2020年には一人が一日にクラウドに送信するデータ量は10GBに及んでいるといわれるほどです。これほどの膨大なデータがクラウドで中央集権的に処理されるとなると、コストの増大や時間の遅れ、クラウドサーバーの負荷が問題となります。
エッジコンピューティングではコンピュータを分散して各端末ごとにデータを処理するという方法でこの課題に対してアプローチしているのです。
エッジコンピューティングの利点
1.リアルタイム性向上
エッジコンピューティングは従来のクラウドコンピューティングと比較して、データが通る道のりが短いです。通信経路が短縮されることで遅延が少なくなるというメリットがあります。スポーツ観戦や自動運転、緊急時の対処が必要なものにおいて、遅延は大きな問題となるため、この技術が大きな恩恵をもたらすことになります。
また、エッジコンピューティングは5Gとの親和性がとても高いです。5Gとは次世代通信システムで「高速大容量」「超低遅延」「多数同時接続」を特徴としています。5Gの無線通信進化による低遅延とエッジコンピューティングの経路短縮による低遅延を掛け合わせて利用されることが期待されています。
2.ネットワーク負荷・コスト削減
各端末ごとにデータを処理してからクラウドに送信することで、ネットワークに流れるデータ量が少なくなります。クラウドでは使用するデータ量によって料金が決定されるため、エッジコンピューティングによるデータ量の削減はコスト削減に直結します。
また処理や通信の負荷を分散することで混雑の解消にもなるでしょう。
3.セキュリティ強化
従来のクラウドコンピューティングでは、一括管理が行われるため、外部からの攻撃によるデータ漏えいなど、データを悪用されるリスクが存在しました。エッジコンピューティングではデータが分散されており、全てのデータが悪用されるリスクが軽減されます。
また、エッジコンピューティングでは処理した後の必要なデータのみクラウドに送るため機密性やプライバシーの保護にもつながります。
私はAIスピーカーを目の前にすると、日常会話まですべて盗み聞ぎされているような気分になるときがありましたが、エッジのコンピュータを自分で設定して情報の取捨選択ができるのは安心ですね。
エッジコンピューティングのこれから
上の図はデバイスからクラウドまでの経路を表したものです。
今まで「エッジ」という言葉がよく出てきましたがこのエッジとはクラウド以外のすべての部分を指します。
「デバイス」「カスタマエッジ」「ネットワークエッジ」「ネットワーク接続点」「データセンター」のどの段階にコンピュータを分散させてもエッジコンピューティングとなるのです。
そのため車にコンピュータが搭載されていて各情報を処理した後、更に上のレベルの基地局のコンピュータで各車の情報を取り扱うというような掛け算も可能です。
このようにエッジコンピューティングはとても幅の広い言葉です。そのためどの段階にコンピュータを搭載するか、どの処理までエッジで行い、どの処理をクラウドで行うのかという組み合わせがとても大切になります。
エッジコンピューティングの利用例
エッジコンピューティングのハイプサイクル
ハイプサイクルとはガードナーという会社が毎年発表する、「テクノロジーの地図」のようなものです。ハイプサイクルについて詳しくはハイプサイクルとは? ~現在のテクノロジーが一目で分かる~をご覧ください。
こちらがエッジコンピューティングのハイプサイクルです。
エッジコンピューティングは2020年現在「過度な期待のピーク期」です。まだ日常に浸透するには5年ほどかかるでしょう。
どの段階にコンピュータを搭載し、どの処理を任せるのがシステム全体にとって最適なのかの手探り状態がまだしばらく続きそうです。
まとめ
今回はIoTや5G時代の核になる技術であるエッジコンピューティングのお話でした。コンピュータを分散するなどお金も維持費もかかりますが、それを大きく上回る利益があることが分かりました。
「爆発的に増えるデータをどのように扱えば効率的か」というのはこれからも続く課題です。エッジコンピューティングだけでなく様々な技術からのアプローチを見守っていきたいですね。
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